■ 灰空に起重機唸る年の暮
( はいぞらに きじゅうきうなる としのくれ )
起重機は、今やどこででも見られるが、これを見るといつも思い出すのが怪獣「ゴジラ」が街を破壊するシーン。恐らくこの起重機ぐらいの背丈だと思うが、そんなものが、仮にのしのしと歩き出したらどうなるのだろう。本日の掲句は、そんな感慨ももって詠んだ句である。季語は「年の暮」(冬)。
ところで、あの起重機とゴジラはどちらが大きいのだろうか。調べてみると、ゴジラの身長は、初めて公開された1954年には50mだったが、その後80m、100mと大きくなっていったそうだ。それは、周囲の高層ビルに見劣りしないためだとのこと。
一方、起重機の方はというと、建築用の大型タワークレーンであれば、腕を伸ばし100m以上にも達するとのこと。どうやら大型の物であれぼ似たような高さになるようだ。因みに高さ50mというのはマンションで15階~20階ぐらいに相当する。
話は戻るが、これまで起重機を詠んだ句としては、以下のものがある。
【関連句】
① かすむ街怪獣のごとく起重機
② 起重機が春夕焼に屹立す *春夕焼(はるゆうやけ)
①は、公園の高台から、街の中に立っている起重機を見て、怪獣のように見えると詠んだ句。季語は「かすむ」(春)。②は、起重機が、春の夕焼けに照らされて、真っ直ぐに立っている景を見て詠んだもの。いずれも、起重機を何か異様なものと捉えて詠んだもので、趣向は本日の掲句とよく似ている。
起重機は季語になっていないので、それを詠んだ句はあまりないものと思っていたが、調べると身近にあるせいか意外とあった。
【起重機の参考句】
凍港に起重機鷲の嘴の如し (久米正雄)
起重機もみなと祭の灯を飾り (五十嵐播水)
起重機の見えて暮しぬ釣忍 (中村汀女)
起重機の豪音蒼穹をくづすべく (篠原鳳作)
炎天下起重機少し傾いて (田中裕明)
*高台から見た起重機(別の日に撮影)