■ 行く年も一期一会やいちごの木
( ゆくとしも いちごいちえや いちごのき )
写真①苺の木の花
とは言っても、実際に見たことがない人がほとんどだと思うので、例により写真を掲載した。右の写真①の満天星躑躅(どうだんつつじ)の花に似た壺型の白い花がそれである。
写真②の丸い赤、橙、黄色に色づいたものは果実で、これが苺に似ていることから、「苺の木」という名前が付けられたとのこと。
写真②苺の花の実
月日は百代(はくたい)の過客(くわかく)
にして、行きかふ年も又旅人也
「行きかふ年」を「行く年」と読みかえることで、「行く年」という旅人との出会いも一生に一度の大切な出会いだったという句意になる。ただ、こうなると下五の「いちごの木」の必然性は希薄になるが、当面はこのまま残すことにした。
*一期一会:「一生に一度だけの機会」という意味で、特に茶道の心得として「どの茶会でも一生に一度のものと心得て、主客ともに誠意を尽くすべきこと」を言う。
ちなみに、苺の木に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
小春日にちょっと気になる木になる苺
本句は、苺の木を初めて見た時に詠んだ、語呂合わせの戯れ句である。
苺の木は、ツツジ科アルブツス属の常緑低木で、原産地は南ヨーロッパ、アイルランド。10月から12月ごろ、本年枝の上部の節に壺形の白い花を咲かせる。果実は1年後に緑色→オレンジ色→赤色と徐々に色づく。そのため、花と果実が同時に見られる。尚、果実は酸味がありジャムや果実酒などに利用されるとのこと。
「苺の木」を詠んだ句はほとんどないので、参考句としては、「行く年」で詠まれた句をいくつか掲載した。
行く年や猫うづくまる膝の上 (夏目漱石)
行く年や人々かへるところあり (前田普羅)
行く年や葱青々とうら畠 (室生犀星)
行く年の後ろに就いて行きにけり (相生垣瓜人)
行く年の木に残りたる栗のいが (沢木欣一)