■ アンテナでつながっている雪の町
( あんてなで つながっている ゆきのまち )
起きてすぐに2階のベランダに行って周囲を見渡すと、各家の屋根には雪が薄っすらと積もっていて白一色の光景が広がっていた。そんな中、テレビのアンテナだけがやたら目についた。
本日の掲句は、そんな光景を見て詠んだ句だが、着想そのものはずっと以前から持っていた。すなわち、人と人との関係はだんだんと希薄になっているが、アンテナで電波を受け、かろうじてつながっているということ。
その趣旨からすれば、雪の町でなくても良かったのだが、雪の閉ざされた町の方がよりイメージに合うと思い掲句となった。
ところで、昨日降った雪は、わが近辺では、この冬初めて降った雪なので「初雪」にあたる。そこで、「初雪」という季語で句を詠もうと思ったが、過去に何句か詠んでおり、新しい着想で詠むことができなかった。
そこで以下では、過去に詠んだ句から比較的良さそうなものを選定し、少し修正して掲載した。
① 初雪のイリュージョンかなみんな白
② 初雪に追いかけてくる靴の跡
①は、初雪が降った朝、いつもの散歩道で見る景色が、何もかも白一色になっているのを見て詠んだ句。イルージョンの元の意味は幻影、幻想ということだが、ここでは大掛かりな奇術の意で使った。
②は、雪が降った後、まだ誰も歩いていない雪の上を歩いた体験を詠んだもの。当然のことながら後ろに足跡ができるが、まるでそれが、自分を追いかけてくるような錯覚に陥ることがある。
関連して言えば、初雪に限らず、雪で埋まった道を真っ先に歩くのは非常に気持ちがよく、高村光太郎が作った詩の「僕の前に道はない、僕の後ろに道はできる」が体感できる。
雪の句は非常に多いが、以下には、初雪に関するものをいくつか選んで掲載した。
【初雪の参考句】
初雪や水仙の葉のたわむまで (松尾芭蕉)
うしろより初雪降れり夜の町 (前田普羅)
初雪のたちまち松につもりけり (日野草城)
今朝は初雪あゝ誰もゐないのだ (太宰治)
初雪のあとの青空金閣寺 (長谷川櫂)
初雪や水仙の葉のたわむまで (松尾芭蕉)
うしろより初雪降れり夜の町 (前田普羅)
初雪のたちまち松につもりけり (日野草城)
今朝は初雪あゝ誰もゐないのだ (太宰治)
初雪のあとの青空金閣寺 (長谷川櫂)