■ ニューロンの如き枯枝天を這う
( にゅーろんの ごときかれえだ てんをはう )
先週の土曜日、2週間ぶりに京都の植物園に行ってきた。俳句のネタがなくなると、決まって植物園に行くのだが、さすがに花はほとんど咲いていなかった。それでも何句かできたので、おいおい記事にしていきたい。
言葉として「神経細胞」はあまりにも硬いので、英語の「ニューロン」を使い、「ニューロンの如き枯枝」というフレーズが先ずできた。下五については少々悩み、「揺れてあり」「微動せり」なども考えたが、最終的に「天を這う」とした。「枯枝」は「かれえだ」「かれえ」と読み、冬の季語。
ところで、今回「ニューロン」という言葉を使ったが、この神経(細胞)に関しては、昨年いろいろと悩まされた。ご存知の方もいるかもしれないが、「腰部脊柱管狭窄症」にかかり、一時歩くことが困難になったのである。
この疾患は、加齢、労働、あるいは背骨の病気による影響で変形した椎間板と、背骨や椎間関節から突出した骨などにより、神経が圧迫されることにより起こるとのこと。少し歩くと足が重くなって歩けなくなり、神経がピンと張ったような痛みが走る。
難しいことは割愛するが、この時初めて、神経が人間の様々な機能を制御していることを実体験で知ったような気がする。最終的には、手術で突起物を削り、脊柱管を広げてもらうことで神経への圧迫はなくなり、ほとんど支障なく歩けるようになった。
今思うことは、人間の身体は本当に精巧にできているということ、そしてそれが半世紀以上の長い期間を経て、少しずつ不具合が出るようになってきていること。これまでの働きに感謝しつつ、日々のメンテナンスは欠かせないと思う今日この頃である。
話は戻るが、過去に「枯枝」を詠んだ句としては以下のものがある。
【関連句】
① 枯枝の生きる証か冬芽立つ
② 枯枝の隙なる月も冴え冴えし
③ 枯枝の声にぎやかに百千鳥
①は、枯枝と言ってもちゃんと生きており、その証拠が冬芽だという句意。②は、枯枝の間から透けて見える冬の冴え冴えとした月を詠んだ。③は、裸木の枝々にたくさんとまって囀(さえず)っている小鳥を見て詠んだ。この句では百千鳥(ももちどり)を季語とし春の句とした。
枯枝を詠んだ句は多いが、その中で比較的分かりやすい句を以下に掲載する。
【枯枝の参考句】
枯枝に烏のとまりたるや秋の暮 (松尾芭蕉)
枯枝のひつかかりゐる枯木かな (高野素十)
握りめし食う枯枝に帽子掛け (西東三鬼)
枯枝の網の目に星牡丹鍋 (平畑静塔)
瓦斯燈の光の翼枯枝に (京極杞陽)
*一句目の松尾芭蕉の句は名句とされているが、描写風景が平凡、不要な季重なり、リズムを崩す字余りなどいろいろと批判されている。備忘のため敢えて掲載した。