■ プライドの鳶の鉤口冬ざるる
( ぷらいどの とびのかぎぐち ふゆざるる )
その様子を眺めていた橋の上から十数メートルぐらいの距離だったので、我が愛用のコンデジでも難なく写真が撮れた。後でPCに取り込んで見た時、比較的大きく写っていたものがあり、そこで最も目を引いたのは鳶の鉤状の嘴である。別に目新しいことでもないが、鳶は猛禽類の仲間であることを再確認した。
本日の掲句は、そのことをベースに詠んだ句である。すなわち、鳶は猛禽類であることのプライドを、その鉤口で示していると詠んだ。下五については、冬の季語として「冬紅葉」「冬の天」などいくつか考えたが、これから迎える厳しい環境のことを想起し「冬ざるる」をおいた。*冬ざるる:冬の風物の荒れさびた感じ。
ところで、鳶は季語ではないようだが、今回、鷲(わし) 、鷹(たか)、 隼(はやぶさ)が冬の季語になっていることを知った。同じ猛禽類なのに何故と思ったが、ネット調べてもよく分からなかった。鳥の季語の分類は非常に複雑であり、今後機会があれば詳しく調べてみたい。
因みに、鳶については過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 北風に鳶ひゅるりと旋回す *鳶(とんび)
② 鳶も見ん糺の森の冬紅葉
①は、鳶が空を飛んでいるのを見ていた時に、「夕焼け空がまっかっか 鳶がくるりと輪をかいた」という歌のフレーズを思いだして詠んだ句。②は、京都の下鴨神社境内にある糺の森(ただすのもり)の真上を飛んでいた鳶と冬紅葉の配合を考えて詠んだ句。
鳶(とび、とんび)は、タカ目タカ科に属する鳥類の一種。主に上昇気流を利用して輪を描くように滑空し、羽ばたくことは少ない。視力が非常に優れていると言われ、上空を飛翔しながら餌を探し、餌を見つけるとその場所に急降下して捕らえる。
餌は、主に動物の死骸やカエル、トカゲ、ヘビ、魚などの小動物。都市部では生ゴミなども食べ、公園などで弁当の中身をさらうこともある。「ピーヒョロロロロ…」という鳴き声はよく知られており、日本ではもっとも身近な猛禽類である。
鳶は身近にいる鳥のせいか、詠まれた句は非常に多い。但し、季語になっていないため、大概他の季語との配合の句になっている。以下参考までいくつかの句を掲載する。
大根引くや低くさがりて鳶の声 (村上鬼城)
群鳶の舞なめらかに初御空 (富安風生)
蓬莱や湖の空より鳶のこゑ (森澄雄)
春の鳶寄りわかれては高みつつ (飯田龍太)
鳶の輪の高きに夏至はきておりぬ (永田耕一郎)