■ 冬空に皇帝ダリアの寂しきや
( ふゆぞらに こうていだりあの さびしきや )
先日、植物園に行った時、花らしい花はほとんど咲いていなかったが、「四季彩の丘」という花壇に植わっている「皇帝ダリア」は違っていた。3~4mぐらいの高さまで太い茎を伸ばし、薄紫色の大柄な花を何輪も咲かせていた。
皇帝という言葉を聞いて、自分が真っ先にイメージするのは、あの「ナポレオン皇帝」である。彼は、フランス革命後の混乱を収拾して軍事独裁政権を樹立。一時、イギリスを除くヨーロッパ大陸の大半を勢力下に置いた。そして、皇帝となり栄華を極めたが、その後失脚し、孤島に幽閉され、51歳で惨めな最後を遂げる。
こういう波乱万丈の人生、何とも華々しく輝かしい反面、非常に孤独で寂しい人生だろうと想像できる。自分には全く関わりのない世界に生きた人のことだが、その生き様などから、「皇帝」という音葉に、何となく「寂しい」というイメージを抱くようになった。
本日の掲句は、そんな思いを持って詠んだ句である。「皇帝ダイア」は季語になっていないので、本句では上五に冬の季語「冬空に」をおいた。「ダリア」単独では夏の季語。
余談だが、2014年現在、世界で「Emperor(皇帝)」の称号を持つのは日本の天皇のみだそうだ。勿論、このことは掲句と全く関係ない。
因みに、皇帝ダリアについては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① あらとうと師走の空にダリアかな
② 冬天に雄々しく咲きぬ皇帝ダリア
①は、師走の空に威風堂々と咲いている皇帝ダリアに敬意を表して詠んだ句。上五は、芭蕉の「あらとふと青葉若葉の日の光」からの引用。②は、皇帝ダリアの雄々しさに焦点を当てて詠んだ句。①と趣向は同じ。
皇帝ダリアは木立ダリアともいう。キク科ダリア属の多年草で、原産地は、南米のメキシコ。花期は11月~12月で、10cm~20cmほどの大きな薄紫色(ピンク)の花を咲かせる。背丈は3~5mまでになる。
皇帝ダリアも非常によく知られるようになったせいか、それを詠んだ句もネットで結構見つかった。その中から何句か以下に掲載する。
皇帝ダリア冬の御堂を明るうす (安立公彦)
皇帝ダリア無傷に深き冬の天 (西山美枝子)
モネの園皇帝ダリア睥睨す (芦川まり)
冬天や皇帝ダリア競ひ咲く (木下和代)
皇帝ダリア思はぬ丈を憂ひをり (鳳蛮華)