■ 冬晴れのアメジストセージ毛は柔き
( ふゆばれの あめじすとせーじ けはやわき )
先日、植物園に行った時に、幾本もの花穂に、鮮やかな紫色の花が咲き乱れているのを見た。
本日の掲句は、そんな花を見て詠んだ句である。近くから見ると花は白色で、紫色の萼(がく)からふわっと出ている。萼の方は、フェルト生地のような感触で毛が柔らかく暖かそう。そんな様子を詠んだ。
尚、アメジストセージは季語でないので、上五に冬の季語「冬晴れ」をおいた。空の青ともマッチして清々しい。また、下五で使った「柔き」は、「柔し」の連体形だが、古語では「にこし」と読むようだ。ただ、「やわし」でも間違いではなさそうなので、掲句では、現代風に「やわし」と読むことにした。
アメジストセージは、シソ科サルビア属の多年草。メキシコ、中央アメリカが原産地。草丈は60cm~1.5m。花期は8月~11月。別名では「サルビア・レウカンサ」、「メキシカンブッシュセージ」という。
薬用植物としても有名で、疲労回復や消化促進、解熱に効果があるといわれている。葉の採取は初夏、日陰に干して乾燥させる。主成分は揮発油、ジテルペン、フラボノイド、フェノール酸、タンニン。
アメジストセージもサルビアの一種だが、サルビアはラテン語で「Salvia」と書き、 「salvare(治療)」「salveo(健康)」が語源とされている。この種の植物は薬用になるものが多いことによるとのこと。英名ではセージ=「Sage」という。
話は変わるが、掲句で使った「冬晴れ」とは、「穏やかに晴れた冬の日」のことで、同様の季語としては、「冬の晴」「冬晴るる」「冬日和(ふゆびより)」「などがある。アメジストセージを詠んだ句がほとんどないので、参考句に関しては、この「冬晴れ」を詠んだ句を掲載する。
冬晴れて那須野は雲の湧くところ (渡辺水巴)
冬晴れや朝かと思ふ昼寝ざめ (日野草城)
冬晴に応ふるはみな白きもの (後藤比奈夫) *応ふ(こたう)
冬晴れの水音鋭がり来る日暮 (岸田稚魚) *鋭がり(とがり)
水の不思議は冬晴れの棚田道 (飯田龍太)