■ 小春日や掃溜菊咲く駐車場
( こはるびや はきだめぎくさく ちゅうしゃじょう )
花は米粒ほどの大きさだが、拡大してみると菊に似て清楚であり、可愛らしい感じがする。そんな花の名前に「掃溜」を付けたのは、植物学者の牧野富太郎氏で、世田谷の掃き溜めで見つけたからこの名にしたそうだ。それにしても少々可哀想な感じがする。
掲句は、そんな掃溜菊が駐車場の片隅で健気に咲いていることを詠んだもの。掃溜菊は、季語でないので、「小春日」を冬の季語としておいた。
*小春日(こはるび)は、初冬の頃の、晴天で穏やかな暖かい天気。小春はもともと陰暦10月の別名で、現行陽暦のほぼ11月に相当する。
余談だが、「掃き溜めに鶴」という成句がある。これは「むさくるしい所に、そこに似合わぬすぐれたものや美しいものがあることのたとえ。」として使われる。ただ、掃溜菊には、鶴の代役は少々荷が重いかも知れない。
掃溜菊は、キク科コゴメギク属の一年生植物。原産地は熱帯アメリカで日本には1920年~1930年代に渡来して帰化。茎は2分岐を繰り返し、高さ15cm~60cm程度になる。葉は対生し、卵形。縁は浅い鋸歯を持つ。
花期は6~11月。花は、直径5mm程度の頭花で、5枚の先端が3裂する短い白色の舌状花、および多数の黄色の筒状花からなる。
参考句については、掃溜菊を詠んだ句がほとんどないので、「小春日」に関するものを掲載する。
【小春日の参考句】
小春日や潮より青き蟹の甲 (水原秋桜子)
小春日や鳴門の松の深みどり (高浜年尾)
小春日にさそはれ降りし無人駅 (相馬遷子)
小春日や青き蝗の生き残り (沢木欣一)
小春日のきな臭きまであたたかし (上村占魚)
小春日や潮より青き蟹の甲 (水原秋桜子)
小春日や鳴門の松の深みどり (高浜年尾)
小春日にさそはれ降りし無人駅 (相馬遷子)
小春日や青き蝗の生き残り (沢木欣一)
小春日のきな臭きまであたたかし (上村占魚)