■ 花水木和菓子の如く蕾みけり
( はなみずき わがしのごとく つぼみけり )
ほとんどの桜が散って、今は瑞々しい緑の葉桜が眩しいくらいである。そんな中、非常に華やかに見えるのが花水木。最近は、街路樹として植栽されているものが多く、特に紅色の花水木などは、まだ桜が咲いているのではと見まごうほどである。
①緑餡入り蕾
この花水木、開花した後に目が行きがちだが、開花の前に面白い光景が見られる。それは、緑の餡を薄い生地で包んだ和菓子のようになるというもの。本日の掲句は、そのことを伝えるために、あえて作った句である。実際の様子は写真①③を参照していただきたい。花水木は春の季語。
ところで、花水木の開花と言えば、紅色や白色の花弁が大きく開いている様子を想像するが、厳密に言えば、これは大きな誤解らしい。花弁のように見えるのは花を包んでいる総苞(そうほう)と言われるもので、中心の塊が花(序)になるのだそうだ。すなわち、先に餡に喩えた緑のものが、実は花の蕾でこれが開いて本当の花となるのである。(写真②)
②緑餡の開花
因みに、花水木に関しては、過去にもいくつか句を詠んだ。その内比較的ましなものを以下に掲載する。
【関連句】
① 薄紅が波立つ如く花水木
② 碧落に紅き漣花水木
③ あまた蝶舞うが如きに花水木
①は、波立つように咲き誇っている薄紅色の花水木を見て詠んだ句。②は、①を改良したもので、バックに碧落(へきらく)=青い空を入れ、波立つ様子を漣(さざなみ)に喩えて表現した。③は、花を沢山の蝶の乱舞に喩えた。
花水木は、ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木で北アメリカ原産。日本における植栽は、1912年に当時の東京市長が、アメリカワシントンD.C.へ桜(そめいよしの)を贈り、その返礼として1915年に贈られてきたのが始まりだそうだ。
花期は4月下旬から5月上旬で、葉に先だって白や薄紅(ピンク)の花をつける。別名は、アメリカヤマボウシ。これは日本の近縁種の山法師(やまぼうし)に似ていることからつけられたとのこと。
【花水木の参考句】
羅漢寺の塀を突き出て花みづき (大堀柊花)
舞姫の出で来る如し花水木 (中杉隆世)
太陽を白き光に花水木 (吉村ひさ志)
どの家も花水木揺れ事もなし (上田繁)
ビル街に癒しのピンク花水木 (山下潤子)
羅漢寺の塀を突き出て花みづき (大堀柊花)
舞姫の出で来る如し花水木 (中杉隆世)
太陽を白き光に花水木 (吉村ひさ志)
どの家も花水木揺れ事もなし (上田繁)
ビル街に癒しのピンク花水木 (山下潤子)
③
和菓子の乱舞