■ 風と共に花は散り蕊残りて赤し
( かぜとともに はなはちり しべ のこりてあかし )
近辺の桜並木の花も、7~8割方散ってしまった。残っているのは、真っ赤な蕊と萼片で、遠くからは、木全体が赤くなって見える。本日の掲句は、そんな情景を見て詠んだ句である。季語は「花」=桜。「花蕊降る」でも春の季語となる。
尚、この過程で、五七五の定型におさめるべく、以下の句も作ってみた。
風に舞い花散り残る赤き蕊
「風と共に」という言葉への拘りをなくして作った、中七の「花散り」で切れる中間切れの句。当初の思いと少し外れるが、句としては成り立つと思われるので、これも残しておくことにした。
「風と共に去りぬ」というのは、ご存じない方もおられるかも知れないが、南北戦争当時を扱った長編時代小説のタイトルである。1939年に映画化されたもので、10数年前にCDで一度みた。内容はほとんど覚えていなかったが、ネットであらすじを調べ、スカーレット・オハラという気性の激しい女主人公の奔放な生き様が少し思い出された。宝塚歌劇などの舞台でも何度も公演されている。
因みに過去には、花が散った後で、緑の葉も生えてきてきた情景を以下のように詠んだ。
花ちりて紅にみどりも麗しき
ところで、染井吉野は全国の桜の70~80%を占めているといわれている。だから、染井吉野が散ると、桜の季節が終わったような気分になるが、白い花の大島桜などは今が満開である。また、遅咲きの八重桜などは、これから本格的に開花する。
だから本当のところ、桜の季節は、まだ数週間は続く。でもそろそろピンク色の桜に飽きた方は、非常に珍しい黄緑色の桜、「御衣黄桜(ぎょいこうざくら」を見るのも良いだろう。最後尾に写真を掲載したのでご覧いただきたい。
【落花、花散るなどの参考句】
ちるはなや鳥も驚く琴の塵 (松尾芭蕉)
人恋し灯ともしごろをさくらちる (加舎白雄)
一筋の落花の風の長かりし (松本たかし)
花散りてまた閑かなり園城寺 (上嶋鬼貫)
しきりなる落花の中に幹はあり (長谷川素逝)
【御衣黄桜】 名の由来は花の色が貴族の衣服の萌黄色に近いため