■ クロッカス心も軽くクロッカス
( くろっかす こころもかるく くろっかす )
冬の時期は花が少なく、俳句のネタ探しに苦労したが、仲春から晩春にかけては、様々な花が次々と開花し、散っていくため、作句と投稿が追いつかない状況である。
本日の掲句は、そのクロッカスを詠んだ句だが、投句のタイミングが幾分遅れたことはご容赦いただきたい。花の名前には、非常に響きの良いものがあるが、クロッカスという名前もその一つ。真ん中の促音「ッ、っ」が軽やかな感じを与えている。本句は、そのことを意識して詠んだ。尚、クロッカスは春の季語。
因みに、過去には花の色に注目して以下の句を詠んだ。
むらさきもきいろもしろもクロッカス
クロッカスは、アヤメ科クロッカス(サフラン)属の多年草で、原産地は地中海沿岸から小アジア。日本には江戸時代に渡来したそうだ。花期は2月初旬から4月。花色には、白、黄、青、紫などがある。丈夫な植物だが日光が足りないと花付きが極端に悪くなるとのこと。
同じ仲間で晩秋に咲くサフランは、花を薬用やスパイスとして用いるが、クロッカスは観賞用のみに栽培される。そのため、春サフラン、花サフランと呼ばれることもある。
尚、クロッカスの名前はギリシア語のクロケ(糸)に由来し、糸のような細長いめしべを持つ種があることに因んでつけられたそうだ。
クロッカスが俳句に詠まれるようになったのは、昭和に入ってからだが、結構詠まれているようだ。以下では、そのいくつかを掲載したい。
日が射してもうクロッカス咲く時分 (高野素十)
クロッカスときめきに似し脈数ふ (石田波郷)
クロッカス天円くして微風みつ (柴田白葉女)
クロッカス光を貯めて咲けりけり (草間時彦)
空よりも大地に近くクロッカス (稲畑汀子)