■男体山、中禅寺湖、華厳の滝 三句
○ 泰然と雪解け待つや男体山 ( たいぜんと ゆきどけまつや なんたいさん )
○ 春の陽を浴びて奈落へ華厳瀧 ( はるのひを あびてならくへ けごんたき )
①中禅寺湖
中禅寺湖は、日本の湖沼では25番目の面積規模を有する。2万年前に男体山(なんたいさん)の噴火でできた堰止湖で、人造湖を除く広さ4平方キロメートル以上の湖としては、日本一標高の高い場所にある湖だそうだ。
湖畔には、名前の由来ともなった「日光山中禅寺(立木観音)」があるが、時間の都合で、参拝はできなかった。
本日の掲句の第一句は、その中禅寺湖の情景を見て詠んだ句である。まだ冷たい風が吹いていて、小さな波も立っていたが、湖面に柔らかい光があたり、非常に穏やかな感じだった。季語は「春」。
②中禅寺湖
第二句は、湖畔にそびえ立つ男体山を見て詠んだ句。富士山を低くしたような堂々たる山で、日本百名山の一つになっている。標高は2486m。古くから山岳信仰の対象となっている山だそうだ。季語は「雪解け」。
③男体山
中禅寺湖の周囲を散策した後、次に向かったのは、すぐ近くにある華厳の滝。この滝は、幅10mで落差が97mあり、一気に流れ落ちる様は壮観である。袋田の滝(茨城県)、那智の滝(和歌山県)とともに日本三名瀑と言われている。明治36年、一高生の藤村操が投身自殺したことから自殺が相次ぎ、自殺の名所という評判が立ったこともあった。現在はほとんどないとのこと。
滝付近の大谷川北岸には観光客向けの有料の華厳滝エレベーターが設置されており、エレベーターで降りた観瀑台からは滝を正面に見ることができる。その観瀑台から見た光景は、瀧との距離が少し離れているせいか、一幅の絵を見るような感じだった。しかし、真下を見た時にはさすがに足が震えた。
掲句の第三句は、その華厳の滝を見て詠んだ句である。春とはいえ、まだ枯木がほとんどで、非常に寂漠としている。水が滝壺に向かって真っ直ぐに落ちる姿は印象的だった。季語は「春の陽」。*「奈落」とは仏教用語で地獄の意。転じて歌舞伎などの舞台の床下の空間などもいう。
この日は、他にいくつか名勝を回ったが、続きは明日に。
【中禅寺湖、男体山、華厳の滝の参考句】
スキーの娘中禅寺湖を目に湛え (川端茅舎)
夕風に紅葉かつちる湖上かな (村上鬼城)
男体を霧の包める遅桜 (沢木欣一)
男体はいま颱風の真青栗 (加藤楸邨)
凍てても華厳凍てし巌谷轟かす (加藤知世子)
華厳見し雄心覚めぬ花野行く (松本たかし)
④華厳の滝