■ 薹立てばブーケの如し蕗の薹
( とうたてば ぶーけのごとし ふきのとう )
蕗の薹(ふきのとう)は、初春の風物詩ともなっている山菜の一つだが、近辺ではほとんど見ることができない。それを今年初めて見たのは、やはり植物園で、2月の終わり頃だった。その後、再び見たのは先週のことだが、ほとんど全ての薹が立っていて、ブーケ(花束)のようになっていた。
本日の掲句は、そのことを念頭に詠んだ句である。薹が立って盛りが過ぎたというが、その姿は可愛いブーケのようではないかというのが句意。その状況は、実際に見ないと分からないと思うが、こういう場合、重宝なのが写真。掲載したものをご覧いただきたい。
ところで、蕗の薹とは何物なのか。意外とこれが正確に理解されていない。まず、蕗の薹は、蕗の花茎のことである。蕗の薹と蕗は、全く別の植物だと思っている人もいるが、これは違う。蕗を象徴する、あの大きな葉とは、しっかりと地下茎で結ばれており、蕗の薹が立った後から、その葉が伸びてくる。
次に食用になるのは、まだ蕾の段階のものであり、薹が立ったものは食べられない。(刻んで食べる人もいるそうだが?)花は、その薹が立った先に花束のように花が固まって咲き、それを「蕗の花」ともいう。更に花茎が伸びたものを「蕗の姑」「蕗のじい」ともいうそうだ。
蕗は、キク科フキ属の多年草。日本、朝鮮半島、中国原産。花期は2月から3月。蕗の薹とともに葉柄(ふき)が食用になっている。名前は、冬に黄色の花を咲かせるところから「冬黄(ふゆき)」といわれ、それがつまって「ふき」になったといわれている。(異説あり)
にがにがしいつまで嵐ふきの塔 (山崎宗鑑)
莟とは汝も知らずよ蕗の薹 (与謝蕪村) *莟(つぼみ)、汝(なれ)
雪国の春こそきつれ蕗の薹 (西島麦南)
うす雪を透いてみどりや蕗の薹 (原石鼎)
蕗の薹やまみづの湧くほとりかな (大野林火)