■ 矢来垣越えて耀う馬酔木かな
( やらいがき こえてかがよう あしびかな )
先日金閣寺のある北山近辺を散策している時に、大きな古い屋敷の前を通った。道路に面したところには、角ばった石が並べてあり、その上には、割り竹を粗い目の菱形に組んだ垣があった。そして、その垣から溢れるように、馬酔木の花がびっしりと咲いていた。
ところで竹垣というのは、今は寺院や古い民家などで見られる程度で、市中ではほとんど見られない。保全や修理が大変なこともあり、今はブロック塀、コンクリート塀が一般的である。それだけに竹垣を見ると何とはなしに郷愁を感じる。
尚、馬酔木に関しては、過去に以下の句を詠んだ。
【関連句】
① 満面に鈴なりの花馬酔木かな
② 妖艶に光るピンクの馬酔木かな
①は、馬酔木の花が咲いている様子を詠んだもの。②は、ピンク色の馬酔木の花を見て詠んだもの。
馬酔木は、ツツジ科アセビ属の常緑低木で原産地は日本。名前は、枝葉に「アセボトキシン」などの有毒成分を含んでいて、馬が食べると酔って足がなえることから「足癈(あしじひ)」と呼ばれ、次第に変化して「あしび」そして「あせび」となったといわれている。 漢字の「馬酔木」もその由来による。(異説あり)
尚、植物学的には「あせび」が正式のようだが、文学的には「あしび」と読むことが多く、水原秋桜子が主宰した俳句雑誌「馬酔木」も「あしび」と読む。
馬酔木を詠んだ句はたくさんあるが、参考までにそのいくつかを以下に掲載する。
【馬酔木の参考句】
来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり (水原秋櫻子)
あしびより出したる鹿の首長し (西山泊雲)
大岩のごろりごろりと花馬酔木 (富安風生)
風ぬるし馬酔木花咲く窓の下 (高橋淡路女)
ふる雪にあしびは花のましろなる (篠田悌二郎)