Quantcast
Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1553

表地も裏地も清し沈丁花

$
0
0
■ 表地も裏地も清し沈丁花
     ( おもてじも うらじもすがし じんちょうげ )
 
ここ数日晴れの日が続き、次々と春の花が開花しだしてきた。沈丁花(じんちょうげ)もその一つで、花束のような白い花を木一杯に咲かせ、甘い香りを辺りに放っている。本日の掲句は、その沈丁花の花を見て詠んだ句である。
 
イメージ 1ところで、花の表地、裏地とはどちら側をいうのか。蕾の頃からじっくり見ていた人からすれば、鮮やかな赤紫色が表地で、真っ白な部分が裏地に見えるかも知れない。一方、花が咲いた状態から見た人にすれば、当然、白が表地で、赤紫が裏地となるだろう。
 
それはともかく、この句では、沈丁花が裏地にも気配りした、おしゃれな花であることを強調したかった。「沈丁花」は「沈丁」ともいい、春の季語。

因みに、花そのものに関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

 紫の内に真白く沈丁花

この句は、花の色に拘って詠んだもの。更に、次の句は、その咲き方に注目して、詠んだもの。

 甘かおるブーケのごとく沈丁花
             *甘かおる(あまかおる)

ところで、季語の花を入れて俳句を詠む場合、花そのものを形容する詠み方は、あまり好ましくないと言われている。季語そのものに花のイメージ含まれており、それを改めて形容するのは、イメージの重複になるためである。確かにそういう側面はあるが、今は、花そのものをしっかりとらえることが大事と考え、敢えてより細かいところまで詠むことに心がけている。
 
ただ、それだけでは、いずれ行き詰ることは十分予想され、新たな展開も考えていかなければならない。その一つの方向として考えているのは、TPOを組み込むことである。例えば先達が詠んだものに、以下の句がある。(TPOが重なるものは、そのいずれかに例示)

   【Time:時間】
     沈丁花あちこちにあり夕まぐれ       (中村汀女)
     沈丁の一夜雪降りかつにほふ       (篠田悌二郎)
   【Place:場所】
     沈丁の毬に芝生や庭好み         (富安風生)
     沈丁は新しき墓に多き花            (及川貞)
   【Occasion:場面】
     沈丁の葉ごもる花も濡れし雨       (水原秋櫻子)
     沈丁や風の吹く日は香を失す      (阿部みどり女)
 
このようにTPOを組み込むことによって、沈丁花の花そのものよりも、それが醸し出す美しさの深みを増すことになる。但し、こうした句も既に数多く詠まれており、陳腐さを避けるには多少とも工夫が必要と思われる。余談だがTPOは和製英語で外国では通じないそうだ。

尚、句作の他の展開方向としては、花とは別の物との配合を考える、主題は別で花を添え物として扱うなどがあるが、今回は割愛する。
 
イメージ 2

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1553

Trending Articles