■ 人恋いの鬼百合揺るる川辺かな (再掲)
( ひとこいの おにゆりゆるる かわべかな )
( ひとこいの おにゆりゆるる かわべかな )
この百合は、街中の道端や川辺などでも自生し、近辺でもよく見かける。
以前にも記したが、この百合を見ると、いつも思い出す童話に「泣いた赤鬼」がある。人間と友達になりたくてたまらなかった赤鬼が、友達である青鬼の犠牲的な計らいで人間と仲良くなるという、とても切ない話。
実のところ、それをモチーフとして、これまで何句か詠んできた。今回も新しい句を詠もうと思ったが、過去に詠んだ句以上の句ができなかった。
そこで、今回はかつて詠んだ句で、比較的気にっている句を再掲することにした。「鬼百合」は「百合」と同様、夏の季語。
尚、同じ着想では、過去に以下の句を詠んでいる。
山里に泣いた赤鬼百合の揺る
鬼百合は寂しがり屋の百合ならん
【関連句】
① 鬼百合が熟女に変わる逢魔時
② 鬼百合やちょうちん横丁縄のれん
②は、赤い鬼百合が俯きかげんに、いくつも咲いている姿を、居酒屋の赤ちょうちんが並ぶ横町に重ねて詠んだもの。
名前は、その花姿が赤鬼に似ていることからつけられたとのこと。ちょっと可愛そうな名前だが、そのお陰で名前がよく知られているように思う。
黄金に染むも鬼百合鬼は鬼
*黄金鬼百合
更に、近縁種で「鹿の子百合(かのこゆり)」がある。花の形は鬼百合と変わらないのだが、花色がピンク色で名前も愛らしい。それに関して詠んだのが以下の句。
*「鹿の子」とは、子鹿の背の白いまだらに似た絞り染めのこと。
鬼百合もピンクを着れば鹿の子百合
*鹿の子百合
「鬼百合」を詠んだ句はままあり、以下にはネットで見つけた句をいくつか掲載した。(過去に掲載したものは除く。)
【鬼百合の参考句】
鬼百合にそふいばら木の籬かな (伊藤信徳)
鬼百合や蒟蒻玉の一むしろ (正岡子規)
鬼百合の向きの気になる墓参道 (大木あまり)
鬼百合がしんしんとゆく明日の空 (坪内稔典)
鬼百合も写ってしまう心電図 (岸本マチ子)