■ 残り物に福ともいうが八重桜
( のこりものに ふくともいうが やえざくら )
しかし、まだ完全に終わった訳ではない。遅く咲く八重桜や枝垂桜などがまさに今満開となっている。
だから、今頃になって訪れた観光客などは、その桜に出会うと小躍りして盛んに写真を撮っている。
本日の掲句は、そんな様子を見て詠んだ句である。「残り物に福」とは、「人が取り残したものや、最後に残ったものの中には、思いがけず良いものがある」ということをいう。「八重桜」は春の季語。
【関連句】
① ゆっくりと咲くもまたよし八重桜
② ふくよかな八重の桜や愛でるべし
③ 旨そうな餅のごとくに八重桜 (原句一部修正)
②は、八重桜が、晩春の柔らかな光を受けてふっくらと咲いている様子を見て詠んだ句。
③は、ぽちゃりとした花と少し赤茶けた葉が桜餅に似ていることを捉えて詠んだ句。
「里桜」の一重の代表は言うまでもなく染井吉野だが、見栄えを良くするために改良された八重咲きのものが多く、その総称が「八重桜」である。特定の品種の名ではない。
開花時期は品種により多少違うが、染井吉野などよりも2週間ほど遅く、4月中旬から5月初旬頃。花の形から「牡丹桜(ぼたんざくら)」とも呼ばれている。
品種で有名なのは「関山(かんざん)」「一葉(いちよう)」「普賢象(ふげんぞう)」など。ただ、名札がないとなかなか区別ができない。
【八重桜の参考句】
夜がくれば夜の冷えおくる八重桜 (能村登四郎)
山に出て山に入る日や八重桜 (成瀬櫻桃子)
八重桜逢ふ魔が刻を歩みけり (柴田白葉女)
天よりも地の暗くして八重桜 (野沢節子)
鳰流れゆき八重桜流れゆき (岸本尚毅)