■ 梔子の実のみぞ朱き冬の寺
( くちなしの みのみぞあかき ふゆのてら )
しかし、全国には神社が8万1000、寺院が7万7000あり、比率的にはそれほど多くない。また、都道府県別に神社が最も多いのは意外にも新潟県で約4700、寺院では愛知県で約4600ある。
とはいえ、京都の寺社には古いものが多く、全国的にも有名なものが多いようである。
さて、この内どれくらいの寺社を訪問したかというと実は数えるほどしかない。そんなこともあり、今年は寺社(特にお庭)めぐりにも少し取り組んでみたいと思う。
先日は、その一環とまでは言えないが、足利将軍家の菩提寺として知られる「等持院(とうじいん)」を訪れた。一部工事中だったが庭園の方は十分見ることができた。
尚、「梔子の実」は秋の季語なので、秋の句にしようとも思ったが、秋であれば実はまだ黄色く朱味が弱いので、敢えて下五を「冬の寺」とし冬の句とした。
【関連句】
① くちなしの実には耳あり口もあり
② 梔子の実や面影は見えねども
②は、純白の清楚な花からは想像もできない果実がなっている様子を詠んだもの。そのことを「面影はみえない」と表現した。
*果実を上から見ると口はあるが中で閉じられている。
梔子は、アカネ科クチナシ属の常緑低木。原産地は、日本、台湾、中国など。花は純白で、六弁の一重咲きのものと八重咲きのものがあり、甘い香がする。花期は6~7月で、一重咲きのものは、10月~11月ごろに黄色ないしは朱色の果実をつける
ただし、街路樹などに多い八重咲きのものは結実しない。
くちなし」の語源について、代表的なものとして、「口無説:果実が開裂しない」と「嘴梨説:くち(ばし)のある梨のよう」という二説がある。どの説にも批判があり、未だ定まっていないとのこと。
「梔子の実」を詠んだ句はあまり多くないが、以下にはネットで見つけた句をいくつか掲載した。尚、梔子は「山梔子」とも書く。(過去に掲載したものは除く。)
【梔子(山梔子)の実の参考句】
梔子の実にある朱や霙降る (永井龍男)
降り出して梔子の実に韻く雨 (高澤良一) *韻く(ひびく)
山梔子の実にかかげ干す洗いもの (森田ひでよ)
梔子の実にうつすらと日暮かな (小河信國)
くちなしの実がふくらんで雨一と日 (榎嶋紀子)