■ 男とて化粧もすなるさねかずら
初めてから既に7年を経過したが、これまで取り上げた植物は約800種。しかし、写真は撮ったが、まだ取り上げたことがないものも500種ほどある。
取り上げない主な理由は、その植物があまり知られていないこと、特徴が明確でないこと、名前が長いことなどにより句ができないためである。
今日取り上げる「実葛(さねかずら)」について言えば、万葉集に取り上げられているくらい古くから知られている植物だが、最近ではあまり知られていない。
自分が、その果実を初めて見たのは昨年のことで、やはり植物園の花壇だった。そして、その時に詠んだのが以下の句である。
固まりてイクラの如きさねかずら
他愛もない句だが、数日前に回転寿司店で食べたイクラの軍艦巻きを思い出して詠んだ。ただ、こういう何かに喩えた句は、それ以上にはイメージが広がっていかない。
その後、平安時代は白粉・眉化粧、江戸時代には眉化粧・脱毛などが流行ったそうだが、明治時代には男性の化粧は禁止される。
戦後は男性化粧品も再び普及し、最近では男性向け美容雑誌も多数発刊されている。そういう現象についてどう見るか。目下男性側にも女性側にも賛否両論があるようだ。
名前は、実(さね)が美しい葛(かずら)=蔓性植物という意。別名の「美男葛(びなんかずら)」は、かつて武士たちが、蔓から粘液をとって鬢付け油(整髪料)に使ったことに由来するとのこと。
【実葛、美男葛の参考句】
さねかづら深く蔵せば好きな垣 (阿波野青畝)
おうすありますの吊札さねかづら (森田峠)
行きすぎて戻りて美男葛の実 (川崎展宏)
さねかづら男は馬鹿を良しとせむ (川上弘美)
下心ありやに美男葛の実 (阿部寿雄)
さねかづら深く蔵せば好きな垣 (阿波野青畝)
おうすありますの吊札さねかづら (森田峠)
行きすぎて戻りて美男葛の実 (川崎展宏)
さねかづら男は馬鹿を良しとせむ (川上弘美)
下心ありやに美男葛の実 (阿部寿雄)