■ もしかして春の花なの水芭蕉
( もしかして はるのはななの みずばしょう )
今日取り上げる「水芭蕉(みずばしょう)」もその一つで、早すぎて花が見られなかったり、遅すぎて花が終わり葉っぱだけになっていたりする。
しかし、先週行った時は思いがけなく、その水芭蕉がいくつかの花をきれいに咲かせているのを見ることができた。
だが、それを見た時ふと水芭蕉は夏の花ではなかったのかという疑問がわいた。それは、「夏の思い出」という有名な歌に水芭蕉が出てくるからだ。
そこで家に帰って早速水芭蕉の花期について調べてみると、開花時期は低地では4月から5月、高地では融雪後の5月から7月と記されていた。
「夏の思い出」に出てる尾瀬は高地なので、水芭蕉が咲くのは5月末頃から。最盛期は6月頃。だから咲くのは夏で間違いない。
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【夏の思い出】 作詞:江間章子 作曲:中田喜直
夏が来れば 想い出す 遙かな尾瀬 遠い空
霧の中に 浮びくる 優しい影 野の小径
水芭蕉の花が 咲いている 夢みて咲いている 水のほとり
石楠花いろに 黄昏る 遙かな尾瀬 遠い空
水芭蕉の花が 咲いている 夢みて咲いている 水のほとり
石楠花いろに 黄昏る 遙かな尾瀬 遠い空
ただ、平地では4月ごろから咲くので春の花と言っても間違いではない。そんなことをつらつら考えて詠んだのが本日の掲句である。
尚、季語としては夏に分類されているが、平地に合わせて春に分類する歳時記もあるようだ。
水芭蕉は、サトイモ科ミズバショウ属の多年草。日本では北海道と中部地方以北の本州の日本海側に分布するとのこと。主として湿地に自生し、発芽直後に葉間中央から純白の仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる苞を開く。
これは一見すると花に見えるが、葉の変形したもので、仏像の背景にある炎形の飾りに見立てて名付けられた。その中央に見える円柱状の部分が、小花が多数集まった本当の花である。
尚、名前は、葉が芭蕉に似ており水辺に生えることに由来する。
「水芭蕉」に関しては多くの俳人が句を詠んでいる。以下にはその中からいくつか選定し掲載した。
【水芭蕉の参考句】
山めぐる夜明の風や水芭蕉 (水原秋櫻子)
水芭蕉しづかな時間通りけり (加藤秋邨)
水芭蕉白き一瓣ひろく垂れ (高野素十)
仏炎といふ白マント水芭蕉 (山口青邨)
雨あとの濁りしづめて水芭蕉 (鷹羽狩行)