■ 雪嶺の彼方に住むや青い鳥
(せつれいの あなたにすむや あおいとり)
今日は朝から晴れて、一昨日に積った雪もすっかり融けてしまった。ただ、高台に立ち、北方に目をやれば、白い雪を頂いた山々がはっきりと見える。掲句は、そんな山々=雪嶺(せつれい)を見ながら詠んだ句である。
ところで、この詩と童話は、いずれも幸せを探しに遠くまで出かけるが、結末は同じではない。
「山のあなた」(下掲)では、幸せは見つけられず帰ってくるが、更に遠いところに幸せがあるのではないかと疑い、いつまでも心が落ち着かない。それは若き日の将来への不安、幸せへの渇望の故だろう。青年期を思い起こせば、確かに山の向こうにある世界への憧れはあった。
一方「青い鳥」では、幼き兄妹が魔法使いに頼まれ、幸せの青い鳥を求めて思い出の国や未来の国を訪ね歩く。しかし、見つかっても変色したり、死んだりして持ち帰ることができなかった。夢から覚めると、自分たちが飼っている鳥が青いことに気がつき、自分の身近にこそ幸せがあることを知る。
どちらも、幸せとは何かを考えさせるものである。掲句は、若い日のことを思い出し、主にプッセの詩によって作ったものである。ただ、自分が見た雪嶺は、反対側からのものであり、山を越えて今いる所にやって来た。そして、問いの答えは以下のようになった。
雪嶺の彼方に見つく青い鳥
雪嶺の此方にぞ住む青い鳥 *此方(こなた)
山のあなた
カール・ブッセ作
上田敏訳
山のあなたの空遠く
幸い住むと人の言う
嗚呼、我人と尋め行きて
涙さしぐみ帰り来ぬ
山のあなたの尚遠く
幸い住むと人の言う
山のあなたの空遠く
幸い住むと人の言う
嗚呼、我人と尋め行きて
涙さしぐみ帰り来ぬ
山のあなたの尚遠く
幸い住むと人の言う
*尋めゆく:とめゆく