■ 侘助を愛しく思う齢かな
( わびすけを いとしくおもう よわいかな )
この植物園には「つばき園」という一区画があって、そこには多種多様な椿が植えられている。その内の幾種類かは花を咲かせていた。
本日取り上げる「侘助(わびすけ)」も、その内の一つで、木全体に多くの花をつけていた。本日の掲句は、その景を見て詠んだ句である。
ところで、侘助という名前から連想される言葉に「わびさび」がある。これは、簡略を善しとし、華美を嫌うという日本独特美意識と言われている。
侘助も、椿の花としては華美でなく控え目。自分も、そんな花を愛しく思うような齢(よわい)になったんだなというのが、掲句の句意である。
余談だが、「齢」という漢字に「歯」が使われているのは、かつては歯がなくなることが心身の衰弱に繋がることに由来していると言われている。また、「よわい」の語源は、「世延い」(よはい)」((世の中で生き長らえること)だと言われている。(異説あり)
【関連句】
① 侘助の社寂しき落花かな *社(やしろ)=神社
② わびさびを知るや侘助雨に落つ
②も落花を詠んだもので、冷たい雨が侘しさを増幅させていた。
【侘助の参考句】
すぐくらくなる侘助の日暮かな (草間時彦)
侘助の花の俯き加減かな (星野高士)
侘助に風立つゆふべもの食べに (鍵和田釉子)
侘助の彩あはあはとささめ雪 (池田蝶子)
侘助の二つの花の一つ落つ (都甲君子)
*紅侘助