■ 枇杷の花寒さこらえて咲いてます
( びわのはな さむさこらえて さいてます )
今日取り上げる枇杷(びわ)の花が、その一つ。この花、白い五弁の花なのだが、薄茶色の萼(苞)に被われて咲くためか、目だたず見過ごされることが多い。
特に、朝方に見ると、マフラーをまとって寒さに耐えながら咲いている感じがする。本日の掲句は、そんな様子を見て詠んだ句である。
尚、「枇杷の花」「寒さ」がともに冬の季語なので本句は季重なり。
ところで、中七の「寒さこらえて」というフレーズ。実は、都はるみが唄った「北の宿から」の歌詞より引用したものである。
枇杷の花を見ていた時に、このフレーズがふと浮かんできて、その流れから下五も「咲いてます」とした。
【北の宿から】
作詞:阿久悠、作曲:小林亜星、歌:都はるみの楽曲。1975年12月1日発売。第18回日本レコード大賞受賞曲。
あなた変わりは ないですか 日毎寒さが つのります
着てはもらえぬ セーターを 寒さこらえて 編んでます
女心の 未練でしょう あなた恋しい 北の宿
【関連句】
① 川べりの陰にこそりと枇杷の花
② 装いはベージュのショール枇杷の花
③ 寄り添えば温かきかな枇杷の花
②は、枇杷の花を包んでいる茶色の萼に注目して詠んだ句。この句では花の萼を「ベージュのショール」に喩えたが、「外套」、「ビロードのマント」に喩えて詠んだこともある。
③は、沢山の花が毛布のようなものをまとい、寄り添って咲いているのを見て詠んだ句。
名前は、果実(葉ではない)の形が楽器の琵琶(びわ)に似ているところから付けられたとのこと。漢字の「枇杷」は、漢名がそのまま用いられている。
【枇杷の花の参考句】
枇杷の花母娘と住みてなまめしき (室生犀星)
誰か来さうな空が曇つてゐる枇杷の花 (種田山頭火)
咲き満ちてどこか不機嫌枇杷の花 (小檜山繁子)
枇杷の花チヨッキを吊すドアの裏 (田川飛旅子)
咲き満ちてどこか不機嫌枇杷の花 (小檜山繁子)
枇杷の花チヨッキを吊すドアの裏 (田川飛旅子)
医師もどり喪章をはづす枇杷の花 (大島民郎)