■ 薄日さす枯木に憩う川鵜かな
( うすびさす かれきにいこう かわうかな )
川鵜は、他の水鳥と一緒に泳いでいることもあるが、先日行った時は、数羽が枯木の天辺に留まって休んでいた。
他の水鳥が木に留まっていることは滅多になく、ちょっと異様な感じもした。本日の掲句は、そんな様子を詠んだ句である。
尚、「鵜」は「鵜飼い」などとともに夏の季語だが、本句では、冬の季語「枯木」をおいて冬の句とした。
ところで、川鵜は何故枯木の天辺で休んでいるのか。これには少し訳があるようだ。
鵜と言えば、「鵜飼い」を思い浮かべる人も多いと思うが、もっぱら水に潜り魚を捕らえて食べる。
普通の水鳥は、羽に油を塗って水をはじくようにしているが、鵜の場合は潜りやすくするため、逆に羽は水をはじかないようにしている。
そのため、一度水に潜ると羽がびっしょりぬれてしまい、水から上がった時には羽を乾かす必要があるのである。
冬川に羽を乾かす川鵜三つ
鵜はペリカン(カツオドリ)目ウ科に分類される鳥類。日本に主に生息するのは海鵜(うみう)、川鵜(かわう)、姫鵜(ひめう)の3種類。
この内の川鵜(かわう)は、主として本州、四国、九州に繁殖地があり、留鳥(または漂鳥)として生息する。主に川(河)に生息する鵜なのでこの名がついた。ただ、河口付近や湖沼、浅海域でも普通に見ることができる。
尚、鵜飼いに使われる鵜は主に海鵜。川鵜に比べ海鵜の方が体が大きく丈夫なためだそうだ。
【鵜の参考句】
鵜の岩に鵜のかげみえず冬の海 (久保田万太郎 )
一礁に一鵜の冬も深まりぬ (加倉井秋を)
凍つるまで鵜の瀬の水のひびきかな (桂信子)
曇天に時に湧きたつ鵜なりけり (細見綾子)
鵜の中のさびしきは羽ひろげをり (林翔)
鵜の中のさびしきは羽ひろげをり (林翔)