■高千穂(峡) 二句
○ 高千穂の深き流れに冬日さす
( たかちほの ふかきながれに ふゆびさす )
○ 高千穂の巌を抉るや寒の水
( たかちほの いわをえぐるや かんのみず )
九州旅行の三日目(最終日)は、宮崎県の高千穂(たかちほ)へ行った。この地は、天上界を治めていた天照大御神(アマテラスオオミカミ)が、地上の国治が乱れている事を知り、孫にあた
る迩迩芸命(ニニギノミコト)を地上にお降ろしになったという、天孫降臨の地として知られ、様々な神話や文化が伝承されている。
この日訪れた高千穂峡(たかちほきょう)は、その神話の舞台にもなっている所だが、約12万年前と約9万年前の二回の阿蘇火山活動の際、噴出した溶岩流(火砕流)を五ヶ瀬川が浸食してできた峡谷である。柱状節理の高さ80m~100mにも達する懸崖が7kmにわたり続いており、浸食によって作られた様々な形の洞窟が散在している。
実際に歩いたのは、峡谷にかかっている高千穂大橋からの約1Kmのコースだが、遊歩道から見る断崖絶壁は壮観かつ神秘的であり、自然の偉大なる力を感じさせるものだった。
本日の掲句はそんな景を見て詠んだ句である。第一句は、高千穂峡の深さに注目して詠んだ句で、季語は「冬日」。第二句は、長い長い時をかけ巌を浸食してしてきた水に注目して詠んだ句で季語は「寒の水」。
尚、高千穂(峡)は国の名勝、天然記念物に指定され、俳枕の一つにもなっており、様々な俳人が句を詠んでいる。その中の幾つかを以下に掲載する。
高千穂の霧きてひびく鵯の声 (水原秋桜子) *鵯(ひよ):ひよどり
高千穂の空の紺青黄蝶舞ふ (松崎鉄之助)
高千穂の神眠る靄鶏鳴けり (北沢瑞吏)
高千穂は雲上の村赤とんぼ (岡部六弥太)
高千穂の雲の荒きに稲架襖 (伊藤てい子) *稲架襖(はさふすま)