■ たおやかに咲く寒蘭に誉れあり
( たおやかに さく かんらんに ほまれあり )
花に関しては、以前から咲いている菊、コスモス、薔薇などが見られたが、特に目新しいものはなかった。
ただ、この時期に毎年開催されている「寒蘭展」が丁度開催されていたので、とりあえずは展示室に入った。
目に入ってきたのは、ずらりと並べられた鉢植えの寒蘭(かんらん)。いずれも茎をすらりと伸ばし、何とも奥ゆかしい感じの容姿をしていた。
実は、昨年もこの「寒蘭展」を見て、以下の句を詠んでいる。
寒蘭の奧もゆかしき容かな
*容(かたち)=容姿
中七で使った「奧もゆかしき」は「奥ゆかしい」を強調して使った言葉。「奥深く上品で心がひかれる」という意。
ところで、展示を見ていて、ふと疑問に思ったのは、カトレヤ、胡蝶蘭など非常に派手な洋蘭に比べ如何にも地味な寒蘭。こういう蘭は欧米ではどんな評価なのだろうということ。
主催団体の担当者に聞くと、寒蘭は春蘭(しゅんらん)などともに東洋蘭を代表するもので、それらを愛ずる文化は日本独特のものだそうだ。(多分欧米にはない文化ということか?)
また、大正時代頃から成金趣味と関わりが深く、投機の対象となることもあったとのこと。そのためはやり廃りに応じて価格の激しく上下に動き、最高値の時期には一鉢100万円を軽く越えるものもあったそうだ。
尚、現在では数千円で購入できる例もあるが、高価なものは数万円する。
【たおやか】 しなやかで優しいさま。女性の姿や舞いの動作などについて言うことが多い。漢字では、「嫋やか」と書く。
【誉れ(ほまれ】 誇りとするに足る事柄。また、よいという評判を得ること。名誉。
花期は10月~1月。花は、葉っぱが変化した萼3枚と、花びら3枚を付ける。花色は、白、青、紅、黄など多様。当初は葉を楽しむことが多かったようだが、後に花色の豊富さに目がむけられるようになる。昭和初期には愛好会もでき、展示会が各地で開かれるようになった。
【寒蘭の参考句】
寒蘭を座右に愛して太郎月 (富安風生) *太郎月:1月の異称
寒蘭の香と日溜りにあそびをり (福田甲子雄)
寒蘭の一茎に灯のともさるる (青柳志解樹)
寒蘭のもらわれて行く夜汽車かな (泉美予子)
寒蘭に障子の明かり届きけり (高原桐)