■ 奥山はイロハ紅葉のあかさたな
( おくやまは いろはもみじの あかさたな )
ところで、楓にもいろいろ種類があるようだが、中でもよく見れるのが「いろは紅葉(いろはもみじ)」。
葉は、掌状に深く 5~9裂し、この裂片を「いろはにほへと……」と数えたことが名前の由来だそうだ。
本日の掲句は、その「いろは紅葉」があるお寺の境内で真っ赤に紅葉しているのを見て詠んだ戯れ句である。
すなわち、上五と中七は「いろは歌」を、下五は「五十音図」のア段を意識したもの。「奥山はイロハ紅葉のあかさかな」と詠めば、それなり通じる句ではあるが。
「いろは紅葉」は秋の季語。
余談だが、「紅葉」という漢字をどう読むか。通常は「こうよう」と読むが、和歌や俳句では、葉が色づくことの意味で「もみじ」と読むことが多い。
「こうよう」は漢語の音読みだが、「もみじ」は、もともとあった和語で、後に「紅葉」という漢字を当てたことによる。
*園芸や造園では、葉の切れ込みの数、切れ込み具合によって「もみじ」と「かえで」を呼び分けているらしいが、ややこしそうなので説明は割愛する。
紅葉はやはり紅葉の紅葉かな ( こうようは やはりもみじの もみじかな )
この句は、紅葉(こうよう)は、何といっても紅葉(もみじ=かえで)の紅葉(もみじ=こうよう)が一番いいと詠った句である。
【関連句】
① 色映ゆるいろは紅葉の古刹かな
② 紅葉手にいろはにほへと習い歌
③ 奥山にいろはにほへと散る紅葉
②は、紅葉の葉を「いろはにほへと」と数えたことを知って詠んだ句。
③は、「いろは歌」からの連想で詠んだ句。本日の掲句の元となった。尚、「にほへ」の「匂う」には、「赤などの色があざやかに照り輝く。」という意味がある。
記事がかなり長くなったので、参考句は割愛する。