■ 安達太良山 二句
○ 安達太良のほんとの紅葉見えざりき
( あだたらの ほんとのもみじ みえざりき )
○ 落葉松の黄葉に雪の裾野かな
○ 落葉松の黄葉に雪の裾野かな
( からまつの もみじに ゆきの すそのかな )
このホテルは安達太良山(あだたらやまの)の麓にあり、スキー場に隣接している。しかし、この時期に雪が積もるのは大変珍しいとのこと。
さて、この日は旅行の最終日だが、もっとも重要なミッションは、安達太良山の紅葉を見ること。
朝一番に、「あだたら山ロープウェイ」に乗り、薬師岳の山頂に降り立った。
晴れていれば、ここから、安達太良山(連峰)の紅葉パノラマが一望できるということだったが、厚い雲がかかってほとんど見えなかった。(下の写真参照)
雨が止んで、今日こそはと思って期待したのだが、お天道様は、その願いを聞き入れてはくれなかった。
*晴れていれば、前方に安達太良山の紅葉パノラマが広がっているはずなのだが・・・。
ところで、安達太良山(あだたらやま)と言えば、高村光太郎の詩集「智恵子抄」の「あどけない話」(最後尾に掲載)を思い出す。教科書にも載っていたせいだろう。
本日の掲句は、その詩を少し意識しながら詠んだ句。「あどけない話」では、「ほんとの空」が見たいとあるが、当方としては、空は見えなくても「ほんとの紅葉」が見たかった。
ブログの写真を整理し選んだ写真も、一枚を除いては落葉松の写真ばかり。そこで、急遽作ったのが第二句である。裾野には、いくつもの列をなして、落葉松林の黄葉が連なっていた。
自分が学校で習ったのは、後藤惣一郎作曲のもの。歌詞の方は1番しか覚えていないが、5番に「浅間嶺(あさまね)」が出てくる。詩を作ったのは、浅間山が見える軽井沢だそうだ。
「からまつ」の名前は、短枝上に集まった葉っぱが、唐松風の絵を彷彿とさせることからきており、「唐松」と記載されることもある。一方、漢字の「落葉松」は、落葉する松という意の熟字。
【安達太良山の参考句】
短夜の雲をさまらずあたゝらね (正岡子規)
*あたゝらね=安達太良根(峰)
春風に雲の白さよ安達太良根 (高浜虚子)
安達太良の梅雨も仕舞や甘草花 (前田普羅)
春風に雲の白さよ安達太良根 (高浜虚子)
安達太良の梅雨も仕舞や甘草花 (前田普羅)
(付録)
あどけない話(智恵子抄) 高村光太郎
智恵子は東京に空が無いといふ。
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間(あいだ)に在るのは、
切っても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山の山の上に *阿多多羅山(あたたらやま)=安達太良山
毎日出ている青い空が
智恵子のほんとうの空だといふ。
あどけない空の話である。