Quantcast
Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1553

■安達太良山 二句

$
0
0
■ 安達太良山 二句

     ○ 安達太良のほんとの紅葉見えざりき  
                  ( あだたらの ほんとのもみじ みえざりき )
     ○ 落葉松の黄葉に雪の裾野かな   
                  ( からまつの もみじに ゆきの すそのかな )

イメージ 1三日目は朝から珍しいことが起こった。とは言っても昨夜からのことなのだが、ホテルの周りが雪で真っ白になっていた。

このホテルは安達太良山(あだたらやまの)の麓にあり、スキー場に隣接している。しかし、この時期に雪が積もるのは大変珍しいとのこと。



さて、この日は旅行の最終日だが、もっとも重要なミッションは、安達太良山の紅葉を見ること。


朝一番に、「あだたら山ロープウェイ」に乗り、薬師岳の山頂に降り立った。

晴れていれば、ここから、安達太良山(連峰)の紅葉パノラマが一望できるということだったが、厚い雲がかかってほとんど見えなかった。(下の写真参照)

雨が止んで、今日こそはと思って期待したのだが、お天道様は、その願いを聞き入れてはくれなかった。


*晴れていれば、前方に安達太良山の紅葉パノラマが広がっているはずなのだが・・・。
イメージ 2ところで、安達太良山(あだたらやま)と言えば、高村光太郎の詩集「智恵子抄」の「あどけない話」(最後尾に掲載)を思い出す。教科書にも載っていたせいだろう。

本日の掲句は、その詩を少し意識しながら詠んだ句。「あどけない話」では、「ほんとの空」が見たいとあるが、当方としては、空は見えなくても「ほんとの紅葉」が見たかった。


イメージ 3ただ、その代わりと言ってはなんだが、真っ白な雪が降り積もっていて、とりわけ落葉松(からまつ)林の黄葉が際立って美しかった。

ブログの写真を整理し選んだ写真も、一枚を除いては落葉松の写真ばかり。そこで、急遽作ったのが第二句である。裾野には、
いくつもの列をなして、落葉松林の黄葉が連なっていた。


イメージ 4落葉松と言えば、北原白秋の詩と歌を思い出す人も多いと思うが、今回改めて調べて見て驚いたのは、この歌は8番まであり、しかも、同じ詩で違った曲がいくつかあるということ。

自分が学校で習ったのは、後藤惣一郎作曲のもの。歌詞の方は1番しか覚えていないが、5番に「浅間嶺(あさまね)」が出てくる。詩を作ったのは、浅間山が見える軽井沢だそうだ。


イメージ 5落葉松は、マツ科カラマツ属の落葉針葉樹。日本の固有種で、東北地方南部・関東地方・中部地方に分布する。日本では、針葉樹で落葉する唯一の松。

「からまつ」の名前は、短枝上に集まった葉っぱが、唐松風の絵を彷彿とさせることからきており、「唐松」と記載されることもある。一方、漢字の「落葉松」は、落葉する松という意の熟字。

イメージ 6「安達太良山」を見に訪れた俳人も多く、それを詠んだ句もままある。以下には、その中からいくつか選び参考まで掲載した。

    【安達太良山の参考句】
      短夜の雲をさまらずあたゝらね   (正岡子規) 
             *あたゝらね=安達太良根(峰)
      春風に雲の白さよ安達太良根   (高浜虚子)
      安達太良の梅雨も仕舞や甘草花 (前田普羅)



イメージ 7

(付録)

  あどけない話(智恵子抄)    高村光太郎

  智恵子は東京に空が無いといふ。
  ほんとの空が見たいといふ。
  私は驚いて空を見る。
  桜若葉の間(あいだ)に在るのは、
  切っても切れない
  むかしなじみのきれいな空だ。
  どんよりけむる地平のぼかしは
  うすもも色の朝のしめりだ。
  智恵子は遠くを見ながら言ふ。
  阿多多羅山の山の上に         
*阿多多羅山(あたたらやま)=安達太良山
  毎日出ている青い空が
  智恵子のほんとうの空だといふ。
  あどけない空の話である。



Viewing all articles
Browse latest Browse all 1553

Trending Articles