■ 剽軽に笑うがごとく猿滑り
( ひょうきんに わらうがごとく さるすべり )
昨日(7月23日)は、二十四節気の大暑(たいしょ)。この時期が年中で最も暑いと言われている。
そんなおり、1週間ほど前から近辺でも目立ち始めた花に百日紅(さるすべり)がある。
この花木の和名は、木肌に樹皮がなくすべすべしているので、猿も滑って登れないだろうということでつけられた。(実際には簡単に登るそうだ。)
そのことから、漢字では「猿滑り」とも書くが、それでは、花の印象とだいぶ違うので、漢名の「百日紅」を当て字にして表記されることが多い。
紅色の花が百日間咲き続けるということで付けられた名前だが、花の様子を表現するのであればこの方が遥かに適切である。
ただ、これを「さるずべり」と読めるどうか。俳句などをやっていない人にとってはいささか難解な当て字と言ってもよい。
*「百日紅」をそのまま「ひゃくじつこう」と読むこともある。また白花を咲かすものを「百日白(ひゃくじつはく)」ともいう。
本日の掲句は、そんな滑稽な名前を持つ花が、ふわふわと笑っているように咲いていると詠んだもの。剽軽(ひょうきん)は、気軽でおどけた感じのすること。「猿滑(り)」「百日紅」は夏の季語。
因みに、「百日紅」「猿滑り」に関しては過去に10数句詠んでいるが、比較的気に入っているものを以下に掲載したい。
【関連句】
① このちぢれ天然にして百日紅
② 白花は雪のごときや猿滑り
③ 熊ん蜂飛んで潜って百日紅
①は、縮れた花弁が重なりあっている花の姿を見て詠んだ句。今はどう言うのか知らないが、かつては髪が生まれつき縮れていることを「天然パーマ」と言った。
②は、白花をつける百日紅を見て詠んだ句。雪の上を猿が滑る様子をイメージして、下五は敢えて「猿滑り」とした。
③は、近くの民家に植えてある百日紅が満開になっていて、沢山の熊蜂(熊ん蜂)が蜜を吸っている様子を見て詠んだ句。
百日紅(猿滑り)は、ミソハギ科サルスベリ属の落葉中高木。原産地は中国南部。日本には江戸期以前に渡来。花期は、7月から10月頃と長く、秋の終わり頃でも普通に咲いている。
花の形は分かりにくいが、フリルのように縮れた花弁が6枚、中央に多数の短い雄蕊、その周りに6本の長い雄蕊、真ん中に1本の雌蕊がある。それが、いくつも重なって咲くから、遠くから見るとふわふわとした綿のように見える。花色には、白、薄紅(ピンク)、真紅などがある。
百日紅(猿滑り)を詠んだ句は比較的多く、以前にも本ブログに掲載したことがあるが、以下には、それ以外のものを掲載した。
【百日紅(猿滑りの参考句】
颱風の空飛ぶ花や百日紅 (水原秋櫻子)
枝先へ枝先へ花百日紅 (星野立子)
百日紅雀かくるる鬼瓦 (石橋秀野)
何恃めとや躍り咲く百日紅 (岡本眸)
何恃めとや躍り咲く百日紅 (岡本眸)
百日紅かすかに風を切る音す (岸本尚毅)