■ 主なき家や盛りの濃紫陽花
( あるじなき いえや さかりの こあじさい )
本日の掲句は、その紫陽花が、ある廃家の庭に咲いているのを見て詠んだ句である。「濃紫陽花(こあじさい)」は、いうまでもなく夏の季語。
ところで、紫陽花は、梅雨時に身近で見られる花の中では、特に艶やかであり、これまでいくつもの句を詠んできた。
その主なものをざっと分類すると以下のようになる。
【花そのもの】
紫陽花が赤青紫とあでやかに
紫陽花や真の花は小さかり *真(まこと)
【雨との取り合わせ】
紫陽花の蕾綻ぶ迎え梅雨
梅雨入りになるやあじさい花一輪
染上げし紫陽花あまた雨に舞い
紫陽花やあま水染みて色づけり
白紫陽花強き雨にて身を清め
久々の雨うれしくて七変化 *七変化=紫陽花の別称
雨上がり光滲ます濃紫陽花
【額紫陽花】
一輪に煌めく銀河額紫陽花
さながらに宇宙の花か額紫陽花
【柏葉紫陽花】
とんがってソフトのごとく柏葉紫陽花
【その他】
真昼間に「隅田の花火」という紫陽花
紫陽花の句はかなり詠んだと思っていたが、こう見てみると、雨との関連で詠んだ句がほとんどである。もう少しTPOなどを意識して考えれば、まだまだ詠めるような気がしてきた。
*TPO:Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)の頭文字をとって作られた和製英語。
紫陽花を詠んだ句は非常に多いが、今回は掲句にように場所を意識した句を選んで掲載した。
【紫陽花(場所)の参考句】
紫陽花や藪を小庭の別座敷 (松尾芭蕉)
紫陽花に馬が顔出す馬屋の口 (北原白秋)
濯ぎ場に紫陽花映り十二橋 (水原秋桜子)
濯ぎ場に紫陽花映り十二橋 (水原秋桜子)
*十二橋 :常陸利根川の南岸の加藤洲十二橋
紫陽花に伊豆の廃家の大月夜 (大峯あきら)
紫陽花のパリーに咲けば巴里の色 (星野椿)
紫陽花に伊豆の廃家の大月夜 (大峯あきら)
紫陽花のパリーに咲けば巴里の色 (星野椿)
▼▼