■ 連発の花火のごとく松葉菊
( れんぱつの はなびのごとく まつばきく )
今の時期、松葉菊は方々に咲いていて、特に珍しいものではないが、ここで見たものは、太陽の光を反射し、ひときわ輝いて見えた。
それが何とも美しく、どこかで見たような景だなと思って近づいて見た時に、放浪の画家と言われた山下清の花火の絵を思い出した。
松葉菊の花は、菊のように丸い形をしているが、花弁が重なることなく火花が飛ぶように広がっている。それが幾重にも重なった様は、連続花火のような感じである。
本日の掲句は、そんな印象を詠んだ句である。「松葉菊」は夏の季語。
因みに、山下清はTVドラマや映画にもなった「裸の大将」で知られ、日本のゴッホとも言われた。特に花火が好きで、貼り絵で描いた何枚もの絵が残っている。
その原画を数年前に飛騨の高山の美術館で見たことがあるが、写真とは違った美しさを表出していた。
山下清の貼り絵(ネットより) →
ちなみに、「松葉菊」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
松葉菊造花と違う光あり *違う(たがう)
松葉菊は、一見、樹脂で作られてた造花のようにも見える。しかし、陽の光を反射する様は、造花とはやはり違う。そんな印象を詠んだ。
松葉菊は、ツルナ科マツバギク属の常緑多肉植物で南アフリカ原産。名に菊がつくがキク科の花ではない。花期は4月初旬から8月末頃までと長い。花の色は、赤紫の他に、白、橙のものもある。花は日中だけ開いて夜は閉じる。
花名は、葉が松葉のように細長く、花は菊に似ていることからつけられた。葉が多肉質でサボテンの葉に似ているので、別名に「仙人掌菊(さぼてんぎく)」がある。
「松葉菊」を詠んだ句は何故かあまりないが、以下にはネットで見つけた句をいくつか参考まで掲載した。
【松葉菊の参考句】
浜の床屋の鏡の中に松葉菊 (滝春一)
松葉菊血縁濃ゆき蜑の町 (福川悠子) *蜑(あま)=海女
白日を降る雨細し松葉菊 (岡本圭岳)
麦むしろひろげし端の松葉菊 (阿部みどり女)
蛇の尾のかくれきらずに松葉菊 (永田耕一郎)